成り立ちと概要
 乗鞍岳は長野県の西部、北アルプス(飛騨山脈)の乗鞍火山帯南部にあり、乗鞍岳という名前は複数あるピークの総称だ。最高峰・剣ヶ峰3025.6mは火山としては国内第3位の高さで、岐阜県との県境である稜線は北は焼岳、槍・穂高連峰へとつづき、南には飛騨との交通の要所だった野麦峠がある。
 乗鞍高原は乗鞍岳の東側に位置し、数回の火山活動で流れ出た溶岩が渓谷を埋めてできた溶岩台地である。標高約1,800mから約1,200mは人の生活圏であり、また高原の上半分の範囲は中部山岳国立公園に入る。乗鞍岳へは、三本滝ゲートから上の道でマイカー規制が実施されるなど、地域全体で自然保護や環境保全策がとられている。

滝と湖沼
 滝は溶岩が侵食されてできたものが多く、それぞれの滝の下流にはかつての滝壷の跡が連続してみられ、周辺には薄い板を重ねたようにみえる板状節理も観察できる。湖沼は乗鞍岳には火山特有の火口湖・堰止湖が多く、高原部には凹凸の多い溶岩の窪地に地下水が滞水してできたものが多い。

<三本滝>  三本滝駐車場・(三本滝バス停)から30分 
 三本の支流による滝が1つに合流する場所。日本の滝百選や県の名勝に指定されている。亜高山帯に位置しシラビソやコメツガ、トウヒ、ダケカンバなどの針葉樹に囲まれ、春・夏はコマドリ、オオルリ、メボソムシクイ、キクイタダキなどの野鳥を観察できる。

<善五郎の滝>  やまぼうし駐車場・(鈴蘭橋バス停)から15分
 落差約21m。周囲にはミズナラやブナ、カエデ類、シラカンバなどの広葉樹、サワラやクロベといった針葉樹の混ざった林が続く。滝見台からは滝と乗鞍岳を眺めることができる。春・夏はミソサザイ、キセキレイ、エゾムシクイ、コルリ、キビタキなどの野鳥が観察できる。

<番所大滝>  大滝駐車場・(大滝前バス停)から10分
 一年を通して水量も豊富で落差40m。滝の上流には千間淵とよばれる淵があり、遊歩道も整備されている。

<牛留池(標高1,590m)>  休暇村駐車場・バス停休暇村から 5分
 シラビソ、クロベ、チョウセンゴヨウなどの針葉樹にかこまれた静かな池だ。湖面には乗鞍岳が逆さまに映り込み、5月末にはミツガシワの白い花が咲き、初夏から夏にかけてやルリイトトンボやルリボシヤンマなどのトンボ類や、モリアオガエルの卵塊などが観察できる。夏にかけては野鳥の種類も多く、バード・ウォッチングにとても良い。遊歩道も整備され、起伏の少ないゆるやかなコースで静かな森林浴が楽しめる。

<どじょう池(1,469m)>  一の瀬・まいめの池駐車場から約10分
 池と周辺の湿地にはミズバショウの群生がみられ、6月にはレンゲツツジがあざやか。

<あざみ池(1,450m)>  一の瀬・ネイチャープラザ駐車場から 7分
 6月下旬にはモリアオガエルの卵塊が観察できる。水面に木立ちが映り込む静かな池。

参考資料:安曇村誌第1巻自然(1998年)、乗鞍の自然と文化(総合学術調査報告書 1976年)